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仮面の下の彼

『オペラ座の怪人』は大画面を飾り、ついにジェラルド・バトラーをスターにするだろう。ロブ・ドリスコルが仮面の下の人物を明かす。

ジェラルド・バトラーは明らかにチャレンジが好きである。彼は剣術、アーチェリーの腕を磨き、『アッティラ』を演じるために乗馬の腕前も上げた。また『トゥームレイダー2』のハードアクションのために猛烈なトレーニングもしてのけ、サッカー映画『The Game of their Lives』のゴールキーパー役のためにアメリカ中西部訛りを習得したのである。

しかし『オペラ座の怪人』こそがあらゆる面で自身の最大の成長だったと彼は認める。それだけでなく、熱烈に待たれていた世界でもっとも有名なミュージカルの大画面バージョンは、このとてもハンサムな35歳の元司法実務修習生を、おかしなことに今まで彼を見い出していなかった国際的な批評のもとに送り出すことになるだろう。

苦悩した、外見の醜いその有名なアンチヒーローの役柄をものにすることはバトラーにとっては大変なことであった。なにしろ少なくとも劇の制作者であるアンドリューは納得させなければならない。アンドリューはファントムをもっと名前の知れた売れっ子の俳優にすることもできたのだ。

昔、彼は学生時代に間に合わせ程度のロックバンドで歌っているだけであった。彼が現代的なクラシック(たとえばこの映画のテーマソングなど)のために、このオペラ風、劇場風パフォーマンスを、ちゃんとしたトレーニングなしで行なったなどということは信じられないほどである。

この映画の監督であり、コリン・ファレルを『タイガーランド』、『フォーン・ブース』でスーパースターにしたジョエル・シューマッカーはぜひにとバトラーを主役に推した。だが、グラスゴー出身の俳優はロイド・ウェバーの前、しかもその作曲家のロンドンの自宅で、ピアノの伴奏だけを共に『ミュージック・オブ・ザ・ナイト』を歌うというオーディションによってその真価を示さなければならなかった。

「歌う直前のプレッシャーはすごかった。」
バトラーは思い出す。
「僕は突然思ったんだ。『ヤバい。かつてないほど有名な曲を、それを書いた本人と、監督とプロディーサーの前でこれから歌うんじゃないか。プレッシャーがないわけない!』」

「僕はとてもつらくて、それに恐ろしくなってるのが自分でわかった。僕はアンドリュー・ロイド・ウェバーのことについて色々聞いていたからね。厳しい監督だってことや、そうそれに、彼は完璧主義者だってことも。でもそれが彼がここまで成功した理由でもあるんだね。」

しかしそれは取り越し苦労であった。翌日、シューマッカーはとても興奮した様子で彼に電話をよこして言ったのだ。
「アンドリューがついさっきまでここにいて、君のことを絶賛してたんだ。」

まだまだ長い道のりがあった。バトラーは数週間続けざまにボイスコーチとミュージカルプロデューサーらと共に声のトーンと声域を完璧にしなければならなかったのだ。

現在、その結果はすべて5500万ポンドの制作費をかけてパインウッド・スタジオが手がけたスクリーンに現れている。共演には同じくあまり知られていない、 利発な歌手の少女の役を演じたエミー・ロッサム、彼女の恋人でありクリスティーヌの心を射止めるためにファントムと闘うことになるラウルを演じたパトリック・ウィルソンを含む。

他のキャストとしてはスペイン人のプリマドンナ、カルロッタを演じるミニー・ドライバー、バレリーナを演じるジェニファー・エリソン、そしてファントムの過去を知っているバレエ団の女主人を演じるミランダ・リチャードソンなどがいる。

でもお間違いのないよう。これはジェラルド・バトラーの映画である。ミュージカルへの挑戦は別にして、映画の脚本を読んだときからバトラーは、たとえそのミュージカルを生で見たことがなくても、その役を自分のものにすることができると思ったという。

「僕はとてもファントムに共感したんだ。」
そうバトラーは言う。確かに彼は仮面で顔を隠し、パリのオペラハウスの地下に潜って、劇団の美しい歌手を育てたりはしていなかったかもしれない。しかしこの人物のとても愛想のいい仮面の下には強烈な感情が渦を巻いているのだ。

「僕はこの役を自分のものにするために何をしなきゃいけないかははっきりわかってたんだ。」
彼は続ける。
「ファントムはすごく僕の心を痛めた。でもそれはまだ入り口にすぎなかった。彼は僕たちが持ってる恐れ、たとえば愛されないこと、不完全であること、醜いこと、ひとりぼっちにされることなんかの恐れを表しているんだ。」

「今、僕はとても幸せに暮らしてるけど、かつて暗闇と共に生きてきた時もあった。この映画を作るにあたってそれらと常に心の中で接触してたんだ。」

このことは注目を集めたいドラマの女王が、自分に注目させるために言うコメントなどではない。バトラーの人生は紛れもなく皮肉であり、それ自体が十分興味深い映画の題材になりそうなほどなのだ。それを少しご紹介しよう。彼が2歳だったときに彼の両親は離婚し、母親はふたりの兄姉とともに彼を連れて出たのだ。バトラーがふたたび父親に会えたのは16歳のときであった。

グラスゴー大学で法律の勉強をしたあと、彼はエディンバラの法律事務所で働き始めた。しかし彼は情緒的な問題を持っており、そのときから目的もなくさまよいはじめた。彼は酒を浴びるほど飲み、ドラッグをやって、警察の留置場で多くの夜を過ごしていたのである。24歳のときまでに、彼は本気で自殺を考えたという。

そんなとき、俳優であり監督でもあるスティーブン・バーコフとロンドンのコーヒーショップで出会ったのは偶然のことであった。彼はバトラーの人生を変えることになる。というのも、バーコフは彼に自身の企画中の舞台、『コリオラヌス』のオーディションを受けるように提案したのだ。彼はその役を得ることができ、1996年に行なわれた次のオーディションでは、彼は舞台版『トレインスポッティング』の主役・レントン役を得ることができたのだ。

映画の役もすぐに決まった。彼は『QUEEN VICTORIA 至上の恋』でスクリーンデビューを果たし、それから過去6〜7年のあいだ彼は『サラマンダー』や『タイムライン』といったSFファンタジー映画から、アンジェリーナ・ジョリーとの共演をした『トゥームレイダー2』までいくつもの印象的な演技を見せてくれた。

才能を見つけるのに長けているジョエル・シューマッカーが初めて目にしたのは、それほど素晴らしいとはいえない映画『ドラキュリア』での彼の演技だった。

「彼はある夜、セントルイスにいたらしいんだけど、見に出かけるしかやることがなかったんだってさ!」
バトラーは笑う。

「彼はそれから僕の経歴を追っていって、結局僕の事務所に電話をかけて言ったんだ。『私はとてもGerryに興味を持っているんだが……しかし、彼は歌えるかな?』」

その答えを我々はもちろん知っている。しかしシューマッカー監督と彼のプロデューサーたちは、演技のできる歌手よりも歌うことのできる俳優の方をさがしていたのだ。

「僕のことをスコットランド人のロック歌手だっていう風に書いている記事を読んだけど、そんなわけないよ。」
バトラーは言う。
「僕はただ弁護士仲間数人と組んだロックバンドで歌い始めただけなんだ。それに正直言えば、そのことがファントムに生かされたとは思ってない。」

バトラーのファントムへの物理的な変身は、彼が公然と「この映画で一番つまらない部分」と呼ぶものである。つまり醜い姿への変身だ。

「僕らは何百もの仮面を見たんだ。」
彼は言う。
「仮面の全決定に至るまでの意見なんて挙げたらきりがないくらいだよ。僕はカメラテストのために数え切れないほどの仮面を付けたんだ。そのことだけで5週間もかかった。」

「それから3週間のあいだ、変身のためのメイクアップに時間をかけたんだ。初めてメイクアップしたとき、僕は9時間もイスに座りっぱなしだった。それにメイクアップをするたびに彼らはやりすぎて、しかもそのままの状態で、『もう一度やってみよう。でもその前にピザをテイクアウトしようじゃないか。』なんて言って行っちゃうんだよ。」

「彼らは結局5時間半で終わらせることができるようになったけど、僕はメイクがすごく大嫌いだったよ。だって考えてみてよ。2〜3人の人たちが君の目や顔や鼻をつついてるんだ。しかも君は動けないんだよ。僕にとってはすごくつらい拷問みたいだった。」

「しかもそのせいで僕はすごく早く起きなきゃいけなかった。朝の3時にね。その撮影の時期、6日間というもの10時半までベッドに入れなくて、しかも興奮してちゃんと寝られないんだ。」

「つまり、セットに行って叫んで叫んで毎日心を痛めて、それから数時間だけベッドに入って、それから起きてまた同じことの繰り返し。そのとき思ったね、『もう二度と演技なんてするもんか!』って。」

しかしもちろん彼はまた演技をするだろう。次にバトラーを見ることができるのは1月に劇場公開される『Dear Frankie』である。低予算ではあるが、心を打たれるドラマ映画で、この作品もまた彼の人生に関係する部分を持っている。それはある少年の話で、彼の母親は父親に関する真実から彼を守るのである。

さらに最近では、何でも屋バトラーはアイスランドで『Beowulf and Grendel』の撮影をしている。その映画では彼は、表題の人物を演じ、羊の皮を着た戦士として、アクションモードに戻ることを求められている。それからまだ仕事は続く。現在、彼は母親の故郷においてもっとも尊敬される人物像、ロバート・バーンズを、その詩人の恋人ジーン・アーマーを演じて新しい経歴を作ることになるだろうジュリア・スタイルズと共に演じる準備をしているところである。

「この役のためにスコットランド訛りをキープしておかなきゃいけないね。」 彼は笑う。

『オペラ座の怪人』は金曜日に全国公開される。

2004年12月8日

Catrin Pascoe, Western Mail

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